2024.06.03

英語のSEO対策で意識したい「ペルソナ」の設計

Yuichi Ishino

英語は一つではない - ターゲット地域に合わせた設計が肝心

英語は世界中で使われている共通言語ですが、一言で「英語」と言ってもその実態は多様です。ターゲットとする地域によって、使われ方や言語的ニュアンスは大きく異なってくるのです。

例えば一見同じ英語に見えるアメリカ英語とイギリス英語でも、colorとcolour、realizeとrealiseといった綴りの違いはもちろん、"I'm good"(アメリカ)と"I'm well"(イギリス)のように、まったく別の表現が用いられることもあります。さらにはシンガポールやインドなどのアジア諸国でも、それぞれ現地の言語や文化の影響を色濃く受けた独自の英語が存在しています。

つまり、「英語圏」と一くくりにせず、地理的・文化的な違いを無視してしまうと、確実に現地のニーズから外れた内容になってしまうというわけです。このように英語のSEOコンテンツ制作では、いったいどの地域の、どのようなユーザー層をターゲットとするのかを事前に明確に定義しておく必要があります。

その手段こそが、的確なペルソナの設計なのです。事例を交えながら、適切なペルソナ設計のポイントを解説していきましょう。

データに基づきターゲット地域とユーザー像を把握する

既に英語サイトを運営しているのであれば、まずはGoogle AnalyticsなどのWebデータを徹底的に分析しましょう。サイトへの流入元の国や地域、年齢層、男女比など、膨大な量のデータがあり、そこから現状のユーザー像を浮かび上がらせることができます。

例えば米国からの流入が群を抜いて多ければ、米国をメインターゲットに据える必要がありそうです。また、退職世代の男性ユーザーが7割を占めているようであれば、年金生活者向けのコンテンツ企画が求められるでしょう。

こうしたWebデータに加え、顧客データベースやカスタマーレビュー、SNSの発言などを入念に分析し、ターゲットユーザーの人となり、嗜好、関心事を可能な限り掘り起こすことが大切です。

新規の英語サイトを立ち上げる場合は、Webデータこそないものの、現地パートナーや営業部門などから入手できる顧客情報、また業界の調査データなどを活用し、ユーザー像を推測していく必要があります。

ワークショップを開きペルソナを仮設計する

ターゲットユーザーや地域に関する様々な情報を収集し、それらをもとにペルソナの仮設計を行います。この作業はワークショップ形式で議論を重ね、ブレインストーミングを繰り返しながら進めていくのが理想的です。

マーケティング部門はもちろん、営業、技術、制作などの様々な部門の担当者に参加してもらい、それぞれの立場から意見を出し合うことで、より多角的で詳細なペルソナ像が浮かび上がってくるはずです。

例えば、ある企業の英語サイト構築プロジェクトでは、以下の3つのペルソナを仮設計しました。

  • 37歳の富裕層アラブ人男性/家族持ち/年収15万ドル以上
  • 28歳のヨーロッパ系ミレニアル女性/シングル/SNSマーケティング関連職
  • 45歳のイギリス人実業家/インド拠点/年収30万ドル以上

ペルソナの設計には、このように国籍、年齢、家族構成、職業、収入水準などを詳細に想定し、ぐいぐい具体性を高めていきます。あくまでも仮設計ですので、完璧を求める必要はありませんが、出来る限り詳しく設定することが肝心です。

細部までブラッシュアップしつづける

ワークショップで生まれた仮設ペルソナをベースに、さらなるブラッシュアップを重ねていきます。現地パートナーやコンサルタント、もしくは英語ネイティブのクリエイターなど、現地の実情に精通した専門家の知見を取り入れながら、設定値の見直しを繰り返します。

例えば、ある欧州向けECサイトのペルソナでは、当初「40代の共働き家庭の女性」と設定されていましたが、リサーチを重ねるうちに、むしろ「20代後半のキャリア女性」の方が適切であることが分かってきました。同じ女性でも世代によって価値観は異なるため、このような修正が必要だったのです。

また、英国の富裕層向けサイトのペルソナについても、事前の想定を大きく上回る宗教観や文化的背景が存在し、それらを踏まえたペルソナ修正に追われたケースがあります。

このように、最初はおおまかな設定でスタートし、段階を経て細部へと徐々にブラッシュアップしていく過程が重要です。特に英語のSEOでは、地理的・文化的な違いへの配慮が肝心なので、現地の実情を意識し続けながらペルソナを見直し、磨き上げていく姿勢が不可欠といえるでしょう。

適切なペルソナ設計なくしてSEOコンテンツ施策は成り立たない

ペルソナの設計が甘ければ、それ以降の英語SEOコンテンツ施策が全て空振りに終わってしまう可能性があります。ターゲットユーザーのニーズを掴み損ねてしまえば、キーワード選定、インテント分析、コンテンツ企画の全ての工程でブレが生じ、最終的な努力が無駄になってしまうからです。

高いSEO効果を望むのであれば、このペルソナ設計の段階で、あらゆる側面から徹底的にターゲットを特定し、詳細なペルソナを構築することが何より重要になります。データ分析、ワークショップ、専門家の知見を惜しみなく投入し、地道な作業を重ねていく必要があるのです。

ペルソナはモニタリングを継続し、常に進化させていく

ただし、ここで作ったペルソナを永遠に固定するのではなく、常に進化させ続けていく必要があります。英語を話す世界のトレンドは日々変化を続けており、ペルソナを定期的に見直すことが欠かせません。

国内のように比較的同質的な消費者像を描ける日本とは異なり、英語圏のユーザーは極めて多様です。文化的背景の違いはさることながら、一つの国の中でも人種、宗教、価値観といった点で多様性に富んでいます。コロナ禍のように大きな環境変化があれば、そのたびにユーザーのニーズやライフスタイルが大きく変わっていきます。

このようにグローバルなユーザーを正しく捉えるためには、ペルソナへのモニタリングと改善を継続することが不可欠です。現地のパートナーや有識者の声に常に耳を傾け、定期的に見直しを行いましょう。社会情勢の変化、新しいトレンドの発生、さらには自社サイトのアクセスデータなど、様々な情報源から分析を重ね、ペルソナの修正を怠らずに続けていくことが大切なのです。

まとめ

英語SEOにおけるペルソナ設計は、その後の全ての施策の前提となる極めて重要な作業工程です。言語と文化の壁を越えて、本当のユーザーニーズを捉えきれるかどうかが、成否を分けるポイントとなります。

データ分析、ワークショップ、専門家の活用、といった様々な手段を組み合わせながら、地道に準備を重ねていく必要があります。さらに一旦設計したペルソナに満足せず、トレンド変化に合わせて改善を重ねていくことが肝心です。

実際のペルソナを具現化し、目の前のユーザーとして捉え直す作業を通じて、初めて本物の英語SEOが実現されるはずです。根気強く取り組むことで、必ずや成果が出てくるはずです。

<参考>「英語のSEO」についての完全網羅記事

英語のSEO対策——グローバル市場獲得に向けた8ステップ

Writer

Yuichi Ishino

Managing Director

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