2025.05.28

B2B向けコンテンツの翻訳がうまくいかない理由──“伝わらない”本当の原因とは

Yuichi Ishino

情報の「正しさ」では動かない時代に

SaaS、製造業、医療機器、半導体――こうした高度な技術分野において、B2Bコンテンツはますます専門的になり、情報の量も複雑さも増しています。しかし、読者が知りたいのは単なる「正しい情報」ではありません。「なぜ今、それを自分の課題として考えるべきなのか?」という納得感の設計こそが求められています。

多くのグローバル企業にとって、日本市場への進出時に既存のコンテンツ資産を活用するのは理にかなった戦略です。実際、その第一歩として“翻訳”が選ばれるのも自然な流れでしょう。けれども、原文の構造・トーン・前提をそのまま移しただけでは、日本の読者の心は動きません。

本当に必要なのは、情報が生まれた背景、書き手の意図、そして読み手に期待されるアクションまで含めて、「文脈そのものを設計し直す」ことです。

TAMLOはこの視点に立ち、単なる言語変換ではなく、戦略的な編集と意味の再構築によって、グローバル企業のB2Bコミュニケーションを支援しています。

なぜ“翻訳”だけでは通用しなくなっているのか

正確な翻訳が「成果」につながらない理由

英語圏で制作されたB2B向けのホワイトペーパーや専門記事は、構成が明快で、ファクトやデータにも裏打ちされた優れたコンテンツです。にもかかわらず、日本語に翻訳した途端、「読まれない」「理解されない」「共感されない」という問題が頻発します。

これは、言語の壁というよりも、“受け手の前提”が異なるという構造の問題です。日本市場では、情報を受け取る際の心理的プロセスや期待値が、欧米とは大きく異なります。たとえば──

  • 知らない略語や前提知識が前半に出てくると、即座に離脱される(例:CSRD, SOC 2など)
  • 強い結論や断定表現が“押しつけがましく”感じられる文化的背景
  • “背景”を丁寧に積み重ねた後に核心に入る構成の方が、信頼につながりやすい

つまり、「翻訳の精度」はあっても、“読者がその情報を受け取る準備が整っていない”のです。

「意味の変換」とは何か――翻訳では解決できない3つの壁

❶ 情報の階層構造が違う

欧米発の原稿は、“結論→根拠”という逆三角形型構成が一般的です。一方、日本のビジネスパーソンは、背景や経緯を重視し、「どうしてその結論に至ったのか」を丁寧に辿る文化に慣れています。

同じ内容でも、構成が異なるだけで「納得度」がまるで変わる――これは単なる好みの問題ではなく、思考様式そのものの違いです。

❷ ターゲットが持つ“前提知識”が異なる

米国のエンジニアに向けて書かれた記事が、日本の購買部門や非技術職に届くこともあります。同じ職種でも、業界の成熟度や導入フェーズの違いにより、「どこまで説明しなければ通じないか」は大きく異なります。“誰が読むのか”を明確に設定しない限り、情報の粒度もトーンも定まりません。

❸ トーン&マナーの違いが無意識の離脱を生む

米国企業が好む“自信に満ちた表現”や“強気な提案”は、日本では時に反感を買います。 「相手の課題に寄り添う」姿勢こそが信頼の前提とされる文化において、直訳は逆効果です。

実例で読み解く「翻訳以上」の支援

ケース①:欧州製造業A社のサービス案内

課題: すでに英語で完成していたが、日本語版では読者の反応が鈍い

TAMLOの対応:

  • 冒頭の語調を“説明”から“対話”に変更
  • 実際の導入事例を早い段階で提示し、抽象→具体→再抽象の構成を設計
  • “専門性を保ちつつ自然な日本語”への変換

成果: ダウンロード数が前回比400%超に改善
示唆: 言葉を直すだけでなく、ローカルのエンジニアにインタビューを行い日本の文脈をコンテンツに組み入れたことが勝因

ケース②:米国SaaS企業B社の技術記事

課題: 原文は高度だが、構成が日本の読者には合わず、読了率が低い

TAMLOの対応:

  • 「なぜこの技術が必要か(Why)」から始める問題提起型構成に変更
  • 図版・箇条書きを用いて、“視覚的負荷”を下げる設計
  • 初学者向けの補足を要所に追加し、読者を“置き去りにしない”編集

成果: 読了率が向上。営業フェーズや新入社員教育でも活用される重要コンテンツに。

TAMLOが提供するのは「翻訳」ではなく「設計と言語化の伴走」

TAMLOが重視しているのは、「正しく訳す」ことではありません。それよりも、“この情報を、どの文脈で、誰に、どう伝えれば行動につながるか”を共に設計することです。

① 戦略性:マーケティングファネルと読者像を明確化

  • 認知獲得段階か?比較検討段階か?
  • 意思決定に関わるのは誰か?エンジニアか、調達担当か、CxOか?
  • どの課題と接続すれば「自分ごと」になるのか?

② 編集力:構造、語彙、視覚性すべてに手を入れる

  • 原文を尊重しつつも大胆に構成を変える柔軟性
  • 「読まれるための言葉」「読者の心に残る流れ」を再構築
  • 図・表・キャプションの提案まで含めた“読後の理解設計”

③ 文脈理解:文化×業界×読者心理の立体的な把握

  • 単なる“文化差”の翻訳ではなく、その背後にある価値観の読解
  • 業界ごとの「言っていいこと/言わない方がいいこと」を熟知
  • 読者の「無意識のつまずきポイント」を先回りして設計に落とし込む

言葉は“戦略”であり、“信頼の入り口”である

「翻訳だけで成果が出ない」。 多くのグローバル企業が感じているこの感覚は、決して気のせいではありません。それは“文脈を変換する編集と設計”が欠けているからです。

TAMLOは、専門的な情報を「わかりやすく」するだけでなく、“正しく伝わり、信頼を得て、行動につながる”構造へと変換するパートナーです。自動車、化学マテリアル、医療、SaaS、セキュリティ、クラウドなど多様な領域で、私たちは「翻訳ではない仕事」をしてきました。

もし、御社のチームが「正しく訳したのに、なぜか伝わらない」と感じているなら、それは次のフェーズに進むサインかもしれません。

TAMLOがご一緒できるのは、「翻訳以外の何かが必要だ」と気づいた瞬間からです。

Writer

Yuichi Ishino

Managing Director

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