企業の“伝える力”を底上げする「メッセージハウス」の仕組みとメリット

企業への信頼を揺るがす情報発信の"ズレ"
発信の選択肢が増えた今、企業の「伝える力」が試されています。自社のウェブサイトやSNS、プレスリリース、営業資料、カンファレンスでのスピーチなど、発信の場は多岐にわたります。しかし、伝え方に一貫性がなければ、企業のブランドや価値が正しく伝わらず、受け手を混乱させてしまう可能性もあるでしょう。
例えば、同じ企業の異なる部門が、それぞれ異なるメッセージを発信していたらどうでしょうか。経営陣が語るビジョンと営業担当が顧客に伝えるメッセージにズレがあったり、公式サイトに書かれている理念とプレスリリースの内容が食い違っていたりすると、受け手は戸惑い、企業への信頼が揺らいでしまいます。
こうした課題を解決する手法として注目されているのが、「メッセージハウス」というフレームワークです。本記事では、メッセージハウスがどのように企業の情報発信を支え、メッセージの一貫性を高めるのか、その仕組みとメリットを詳しくご紹介します。
企業のメッセージに一貫性をもたらすナラティブの力
企業が発信するメッセージは、単なるキャッチコピーではなく、一貫したストーリーとして設計されていることが望ましいとされています。こうしたストーリーづくりの鍵となるのが、「ナラティブ(Narrative)の構築」です。
ナラティブとは、企業の存在意義や社会における役割を物語のように組み立てて伝えるための枠組みです。企業理念やパーパス、ビジョンなどを掲げていても、言葉だけでは企業の考えが十分に伝わらないこともあります。だからこそ、それらをストーリーとして整理し、顧客やステークホルダーの共感を得られる形で伝える工夫が求められます。
例えば、「持続可能な社会の実現」という理念を掲げる企業があったとしても、具体的な取り組みが見えなければ、ただの理想に聞こえてしまうかもしれません。そこで、実際に行っているサステナビリティ施策や、これまでの実績をストーリーとして伝えることで、メッセージに説得力が生まれ、共感を得やすくなります。
こうしたナラティブの整理と発信を支える土台となるのが、「メッセージハウス」です。
企業のメッセージを整理・強化する「メッセージハウス」とは

メッセージハウスとは、企業の伝えたいメッセージを体系的に整理し、一貫性を持って発信するためのフレームワークです。建物の構造に例えて説明されることが多く、主に次のような要素で構成されています。
まず、「屋根」にあたるのが企業のコアメッセージです。これは、企業のブランドや価値を端的に表した、すべてのコミュニケーションの中心となるメッセージに該当します。
そのコアメッセージを支えるのが、「柱」となる複数のサポートメッセージです。企業の強みや提供価値を具体的に示し、コアメッセージに厚みと信頼性を持たせる役割を果たします。例えば、企業のビジョンが「環境負荷の低減」であれば、「再生可能エネルギーの活用」「リサイクルの促進」「環境配慮型製品の開発」などの取り組みが、サポートメッセージとして柱になります。
さらに、その柱を支える「土台」となるのが、サポートメッセージを裏付ける具体的な証拠やデータです。実際の事例や統計データ、顧客の声などを加えることで、メッセージ全体に説得力と信頼性が加わります。

メッセージハウスの導入がもたらすメリット
メッセージハウスを活用することで、企業の情報発信がより明確になり、さまざまなメリットが生まれます。
なかでも大きなメリットは、社内外のコミュニケーションが統一されることです。全社で一貫したメッセージを共有することで、ブランドイメージがよりクリアになり、顧客やステークホルダーからの信頼にもつながります。また、社員一人ひとりが共通のメッセージを理解し、適切に使えるようになることで、広報・マーケティング・営業などの部門間の連携もスムーズになります。
一貫性のあるメッセージは、顧客やパートナー企業への訴求力も高めます。企業の価値がわかりやすく伝わることで、製品やサービスの魅力をより効果的に届けられ、結果としてブランドの競争力向上にもつながります。
さらに、メッセージハウスは危機対応にも役立ちます。万が一トラブルや炎上が発生した際にも、あらかじめ整理されたメッセージがあれば、迅速かつブレのない対応が可能になります。場当たり的な発信を避け、信頼を保ちながら対応できる点も大きな強みです。
TAMLOが支援する「ナラティブ&メッセージハウス」構築のステップ
TAMLOでは、クライアント企業のナラティブ(Narrative)の構築からメッセージハウスの作成、さらにその後のコンテンツ展開までを一貫してサポートしています。
プロジェクトによって具体的なプロセスは異なりますが、基本的には次のような流れで進めます。
1. ナラティブ構築のためのワークショップを実施
まずはじめに、TAMLOとクライアントでワークショップを行い、ナラティブの方向性を一緒に定めていきます。特に海外で広く事業を展開している企業の場合は、日本市場と海外市場の違いや、日本で好まれるメッセージの傾向なども共有しながら進めます。
2. クライアントによる情報整理と深掘り
ワークショップのなかで、次のような内容をクライアントとともに整理していきます。
・自社の強みや、他社との差別化要素の洗い出し
・それらを裏付ける、具体的なエビデンスや事例、実績の整理 など
3. ナラティブの核となる要素を設計
収集した情報をもとに、以下のようなポイントを明確にしていきます。
・競合にはない独自の強み
・ナラティブのベースとなるコアメッセージ
・メッセージを伝える際のトーン&マナー(言葉の雰囲気やスタイル)
・どこに重点を置いて発信するかの優先順位 など
4. メッセージハウスの作成とコンテンツの展開
こうして設計した要素を、一つのストーリーとしてまとめたものが「メッセージハウス」です。完成したメッセージハウスをもとに、以下のようなコンテンツ制作を展開します。
・代表メッセージの作成
・SNSプロフィールの見直し
・ホワイトペーパーなどの各種コンテンツ制作

一貫したメッセージが企業の信頼と競争力を高める
企業が持つ価値を正しく伝え、社内外に浸透させていくためには、メッセージハウスのようなフレームワークが効果的です。一貫したメッセージを構築し、企業活動全体に活用することで、ブランドへの信頼が高まり、マーケティングの成果も向上します。さらに、トラブル発生時の対応においても、発信の軸がぶれないという意味で、強固な基盤となります。
情報があふれる今、企業のメッセージを整理し、わかりやすいストーリーとして伝えることの重要性が高まっています。伝えたい価値をきちんと届けるためには、メッセージを整理し、伝わる形で発信する工夫が欠かせません。「自社の価値をもっと明確に伝えたい」「社内外に一貫したメッセージを浸透させたい」とお考えの場合、メッセージハウスの導入は有効な手段となります。
TAMLOでは、ナラティブの構築からメッセージハウスの作成、その後のコンテンツ展開までを一貫してサポートしています。目的や課題に合わせて最適なアプローチをご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。