2020.03.31

海外向けウェブコンテンツと英語の翻訳

Yuichi Ishino

日本企業が採用する、英語コンテンツの制作手法

海外からの読者や顧客を獲得するため、企業が英語でウェブコンテンツを制作し、発信するケースが増えてきました。この傾向は、観光系や外食系のインバウンド産業だけに止まりません。自社のサービスやプロダクトを世界に届けようと、英語のコンテンツマーケティングに取り組む業種は多岐に渡ります。

そのなかで、もっとも多い英語コンテンツの制作アプローチは「日本語コンテンツの英語化」です。すわなち、「既存の日本語コンテンツを英語に翻訳する」、もしくは「新規で日本語コンテンツを作り、これを英訳する」というもの。特に前者の場合は比較的コンパクトなバジェットで始められるので、ポピュラーな手法となります。一方で、英語ネイティブのライターがイチから英語コンテンツを作るアプローチもありますが、制作過程で企業の担当者が「日本語で内容のチェックをしたいという」ニーズが高いことから、現実的にこの手法はあまり採用されていない印象を受けます。

以上に挙げた背景を踏まえ、この記事ではまずウェブコンテンツを英語に翻訳するにあたって重要視するべき考え方を紹介します。そして、そのあとに、コンテンツの種類ごとにどのようなチーム編成で制作・翻訳を行うのがベストかを取り上げます。

 

言語・文化・市場を理解しよう

そもそもなんのためにコンテンツを英語に訳すのか。冒頭に立ち返ると、「海外からの読者や顧客を獲得するため」という目的が圧倒的に多いのではないでしょうか。しかしながら一口に海外といっても、世界には様々な国や地域があります。英語圏を挙げるだけも、アメリカ、カナダ、イギリス、シンガポール、インド、オーストラリア、などなどキリがありません。これらひとつひとつを十把一絡げに「海外市場」とできないのがウェブにおける英語のコンテンツマーケティングの難しさです。

例えば、言語においてアメリカとイギリスでは綴りが異なる単語が多いですし、時に全く違う表現をすることがあります。文化についても同様です。イギリスが旧宗主国である、カナダやオーストラリアは文化的な共通点は多いですが、例えば同じアジアでもインドとシンガポールでは宗教観は全くちがうでしょう。市場に関しても、アメリカとシンガポールではGDPが大きく異なるなど、一筋縄ではいきません。

 

トランスクリエーションで伝える

このように、英語翻訳にあたっては、それぞれターゲットとする地域やペルソナに合わせて言語・文化・市場の違いを考慮に入れる必要があります。そして、これを踏まえて取り上げたいのがトランスクリエーションの考え方です。トランスクリエーションとはトランスレーション(翻訳)とクリエーション(創造)を掛け合わせた造語。主にマーケティング業界や翻訳業界で使われる言葉です。直訳にならないよう、「伝えたいメッセージ」の意図を汲み取りながら、時に大胆な訳を行うこと。逐語訳(一語ずつそのまま訳すこと)では抜け落ちる含意を丁寧にすくい取ること。こうした翻訳態度は、言語・文化・市場の違いから生まれるギャップをしっかりと埋めるはずです。このトランスクリエーションのアプローチを採用することで、皆さんの日本語コンテンツも、きっと世界で通用するように生まれ変わるでしょう。

 

創造的な翻訳を実現するプロセス(バイリンガルとネイティブ)

それでは、質の高いトランスクリエーションを実現するためのプロセスとは、いったいどのようなものでしょうか。私たちTAMLOでは次のようなフローを取り入れています。

①クライアントから日本人バイリンガルの編集者に、会社のミッションやビジョン、ウェブコンテンツの英語翻訳で達成したいゴールについて共有してもらう

②バイリンガルの編集者がそれらをまとめ、翻訳者またはライターにガイドラインとして共有する

③ガイドラインをもとに翻訳者が既存コンテンツをトランスクリエーションする(新規記事の場合はライターが執筆する)

④ネイティブの編集者が編集および校正を行う(プロジェクトにより、ネイティブのマーケターもチェックを行う)

⑤バイリンガルの編集者が最終チェックを行い、クライアントにコンテンツを提出する

このように、バイリンガルとネイティブがそれぞれの工程でしっかりとコンテンツに携わることで、ローカルのターゲットに伝わるコンテンツが完成していきます。

 

コンテンツのジャンルによって専門メンバーを変える

ウェブコンテンツを英語化するにあたっての基礎的な考え方とフローについて見てきましたが、最後に「コンテンツの流通経路」ごとに更新すべきチームのチューニングについて触れておきたいと思います。

Google Analyticsに倣えば、ウェブコンテンツは「検索(オーガニック)」「ソーシャル(ここでは参照流入も含む))」「直接(ウェブサイト)」を通してユーザーのもとに届けられます。英語であれ日本語であれ、この原則は同じ。そして、これに基づいて考慮しなければならないのが、経路別の制作アプローチです。たとえば、検索からの流入を狙うとすれば主にSEO施策を採用する必要があります。ソーシャルからの流入であれば、キャッチーなタイトルやニュース性のあるネタ選びなど、企画を重視したいところ。直接流入をテコ入れする場合は、ウェブサイト全体のトーンアンドマナーを見直したり、ブログを充実させなければなりません。

すなわちどのタッチポイントから読者(ユーザー)獲得を狙うかによって、コンテンツ制作のチーム編成を一部変える必要があるのです。SEOコンテンツを翻訳する場合は、フローの途中でSEOスペシャリストの意見を取り入れるべきでしょう。フェイスブックへの投稿用コンテンツを作る場合は、ソーシャルメディアプランナーのアイデアが、コンテンツのパフォーマンスを左右します。ウェブサイト全体の翻訳においては、コピーライターの手を借りたいところ。このように、ケースバイケースで柔軟にチームを変えていくことも翻訳の質を高めることにつながります。

<参考>「英語のSEO」についての詳細記事

英語のSEO対策——海外マーケティングの第一歩

 

TAMLOでは東京とロンドンのクリエイティブチームが臨機応変にチーム編成し、ウェブコンテンツを英語化しています。お気軽にお問い合わせください。

Writer

Yuichi Ishino

Managing Director

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