2025.05.23

【事例紹介】日本の玩具メーカーPeople社の英国進出支援とストーリー設計

Yuichi Ishino

新たな市場への進出は、多くのブランドにとって大きな挑戦です。「ぽぽちゃん」「わんぱくジム」「ピタゴラス」などのヒット商品で知られる日本の老舗玩具メーカー「ピープル」も例外ではありません。2025年5月、幼児向けの新シリーズ「1curiosity(ワンキュリオシティ)」を英国で展開するにあたり、認知度ゼロの市場でまったく新しい商品を紹介するという課題に直面しました。

TAMLOは、こうした文化と言語の壁を越えるブランディングやローカライズを専門とするマーケティングエージェンシーです。ピープルの英国展開では、メッセージ開発からSNS運用までを一貫して支援し、現地の親たちに1curiosityの魅力が届くよう伴走しました。

ピープルとは?そして、1curiosityとは?

1curiosityの英国進出

「ピープル」は、日本の玩具業界で40年以上にわたり親しまれてきた老舗メーカーです。「子どもの好奇心がひらく瞬間をつくる」という理念のもと、数々のヒット商品を生み出してきました。そんな同社が新たに開発したのが、幼児向けの新シリーズ「1curiosity(ワンキュリオシティ)」です。

このシリーズは、3年にわたる国際的な観察調査から誕生しました。対象は19カ国・75組の親子。調査の中で明らかになったのは、「世界中の1歳児は、ボトル、トレイ、ふた、コップなど、日常にある“なんでもないモノ”に共通して強く惹かれる」という普遍的な行動パターンでした。

こうした“世界共通の好奇心”をもとに開発されたのが、1curiosityシリーズです。現実世界を模した仕掛けが、子どもたちに探索・発見・自主的な遊びを促します。正解のない遊びを通して、創造力と主体性を自然に引き出す設計です。

とはいえ、どれほど魅力的な背景があっても、それを“現地の親たちにどう伝えるか”は別の問題。英国市場への展開には、まったく新しい壁が立ちはだかっていました。

課題

英国でのローンチに必要だったのは、単なる翻訳ではありません。トーン、メッセージ、ブランドの世界観を調整しつつ、1curiosityの本質を守る“精緻なローカライズ”が求められました。

主な課題は以下の3つです。

文化的ギャップ

商品名やストーリーは、日本独自の文化的背景に根差しており、そのままでは英国の親には響きません。現地の消費者感覚に合わせた表現が必要でした。

ブランド認知ゼロからの出発

英国では無名のピープルにとって、ゼロからの信頼構築と価値訴求が不可欠でした。

タッチポイントの一貫性

商品パッケージからWebサイト、SNSまで、すべての接点で“ブランドの核”と“現地の感覚”の両立が求められました。

これは、翻訳ではなく、“戦略的なローカライズとブランディング”のプロセスでした。

TAMLOのアプローチ

TAMLOが大切にしているのは、文化をつなぐストーリーテリングです。1curiosityの英国展開では、明快さ・一貫性・文化的な洞察を軸にアプローチしました。

1curiosity英文パッケージ

商品名の再設計

まず最初に手をつけたのは、英国の親が直感的に理解できる商品名へのリネーミングです:

  • フムフム → Lantern(ランタン)
    「なるほど」と理解を示す音「フムフム」。英語では、ひらめきの象徴である「ランタン」に置き換えました。光のように“発見の瞬間”を照らすという意味を込めています。
  • モギモギ → Nook(ヌック)
    「もぐ」は“つまむ・引っ張る”を意味する動詞。「Nook」は、引き出したりしまったりできる“秘密の小部屋”のようなニュアンスを持ち、ぴったりな語感と世界観を備えています。
  • カラクル → Carousel(カルーセル)
    「カラカラ」は軽快な音、「クルクル」は回転のイメージ。“Carousel”はそのスピンの動きを想起させながらも、遊園地のような楽しさと多様な発見の連続を表現しています。

パッケージとメッセージの刷新

商品パッケージ、Webサイト、顧客向けの言葉すべてを見直しました。ポイントは以下の二点でした。

  • 一目で魅力が伝わる「シンプルで明確」な構成
  • ピープルのブランドらしさを保ちつつ、「自然で軽やかな英語表現」
1curiosity英文ウェブサイト

デジタルでのプレゼンス構築

現代の英国ファミリーにリーチするには、強いデジタル戦略が不可欠です。

  • Instagram:1curiosityブランド単体の魅力を発信し、発達・好奇心などのテーマを深掘り。
  • LinkedIn:ピープル全体の企業価値を伝える場として、リサーチ主導・子ども中心の玩具開発姿勢を打ち出しました。

アンケートからSNS投稿まで、すべての接点を“統一されたブランドストーリー”として捉えました。

成功の鍵

1curiosityの英国ローンチが成功した理由は、大きく3つあります。

文化への深い理解

日本と英国、両方の文化を理解したTAMLOのチームが、育児・リテールの現地トレンドも踏まえて戦略を設計しました。

親としての視点

本プロジェクトのリードコピーライターを含む2名のTAMLOメンバーが、ちょうど1curiosityの対象年齢の子どもを持つ親でした。そのリアルな親の目線が、マーケティングに本物の説得力を与えました。

ピープルとの共創

プロジェクトの最初から最後まで、ピープルのチームと密に連携。商品名の再設計からSNS運用まで、全ての意思決定が「共有されたビジョン」に基づいて行われました。

異文化市場に届くストーリーテリングの力

グローバルなストーリーテリングとは、単に言葉を変えることではなく、「想い」や「価値観」を現地市場で共鳴させることです。1curiosityの英国での成功は、「大切なエッセンスを守りながら、その土地の言葉で語ること」の力を証明しています。

TAMLOは、こうした「言葉の壁を越え、価値を伝える」支援を行っています。

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Writer

Yuichi Ishino

Managing Director

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