グローバル企業のローカライゼーション:課題とその解決方法
あらゆるビジネスにおいてデジタル化が進みつつある中で、企業はますます海外進出するチャンスを手にしやすくなりました。しかし、海外進出を成功させるためには、自社の製品や、サービス、コンテンツを新たな市場に最適化させることが極めて重要です。そのためにローカライゼーションを行う必要があります。単純なプロセスに思えるかもしれませんが、ローカライズを適切に行うことは容易ではありません。実際に、多くの企業がローカライゼーションにおいてさまざまな課題を抱えています。
海外進出するブランドが新たなターゲットについて理解するのはすぐには難しいでしょう。また、海外市場で新たなファンを増やせるように、ブランド自体を変革する必要があるかもしれません。
過去のローカライゼーション事例から学ぶ
「特に海外ビジネスについての知識や経験が全くない中小企業にとって、ローカライゼーションは課題になります」とTAMLOのコンサルタントであるJames Lovellは説明します。「多様な文化的アプローチによるビジネスに精通しているはずのグローバル企業でさえも、いまだにローカライズの壁に直面しています」
グローバルな大企業から小さなスタートアップ企業まで、あらゆる企業がローカライゼーションを行う中で避けるべき不適切な表現について課題を抱えています。例えば、ペプシは中国市場を「活気づける(come alive)」ことを意味したつもりが、「お墓に眠る親族を蘇らせる」ことを意味する表現を使ってしまったことがあります。また、ホンダはスカンジナビア市場に売り出した車の名前がローカルでは下品な意味を持つことを知って恥ずかしい思いをしました。
TAMLOは、東京とロンドンに拠点を置くコンテンツマーケティング・エージェンシーです。海外市場に適切なアプローチをするため、そしてローカライゼーションの課題を軽減するためのお手伝いをしています。私たちが大切にしているのは、文化のギャップを埋めること。それは、海外市場へ進出するお客様のために、そして多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まる自社内においても、必要不可欠なことです。私たちは、欧米の企業が日本で成功するため、また日本の企業が海外で成功するための支援をしています。
変化に対して抵抗感が生まれる
ほとんどの企業がローカライゼーションの重要性を理解しているはずです。しかし、それがスムーズに進まないのは、人間の潜在意識には変化に対する抵抗感があることが影響しているかもしれません。変化することに抵抗があるのは、人間として当然のことなのです。経済誌『Forbes』によると、人間の脳は変化を嫌い、「ビジネスリーダーにとって変化はまさに苦痛になる」とされます。もちろん、変化することにはリスクが伴います。しかし、ブランドが行き詰まったままでも時代遅れになるリスクがあります。
「現在、私たちは大手グローバル企業による日本市場向けのローカライズをお手伝いしています」とChief Localisation OfficerであるAramaki Nanakoは語ります。「B2BとB2Cの両方の事業を行っているユニークな企業です。『クールなテックカンパニー』を目指すブランディングを行っていますが、いまのところブランディングの再構築に成功しています。その企業のソーシャルメディアコンテンツを私たちが日本向けに適応させています。インフルエンサーたちとも協力してきました。しかし、企業における日本のチームがこのようなブランディングに馴染みづらそうなのが課題になっています。現在は元の投稿記事をより企業っぽい感じにアレンジしています」
「日本のチームから見れば、そうするのも当然です。日本のテクノロジー業界は企業っぽさを重視する傾向があるからです」とJamesは付け加えます。「しかし、近年はそんな業界の傾向も変わりつつあります。時代の流れに合わせて、企業も変わるべきではと私たちは考えています。そして、お客様に納得いただけるように新しい提案を続けてきました」
信じて挑戦する
もちろん、お客様と良好な関係を保つことがお互いにとって重要です。私たちはお客様の意見を尊重する一方で、長い目で見ると新たな手法がベストであることを信じていただきたいのです。場合によっては、私たちから異なる意見をお伝えすることもあります。お客様の意見と、新しい提案、その両方のバランスを取りながら進めています。
「私たちは同企業のアメリカのチームとも日本のチームとも良好な関係を築いています」とNanakoは説明します。「ソーシャルメディア部門の代表とも率直に話せる関係にあります。そこで、お客様の意見を理解しつつも、私たちの意見は少し異なることを伝えています。今回は企業のブランディングも考慮した上で折衷案を提示しました」
グローバル企業のローカライゼーションを支援するためには、時に企業の部門間の仲介役になる必要が出てきます。それもローカライゼーションに精通するマーケティング・エージェンシーであるTAMLOにとっては喜ばしいことです。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まるチームが一丸となって、共通の目標に向かって進み、ポジティブな変化を生み出すためのお手伝いは私たちのやりがいです。
前述したテクノロジー企業の場合、「ブランドを日本のターゲットに向けてうまく適応させるのはアメリカのチームの仕事です」とNanakoは説明します。「その目標を達成するために、それぞれが異なる立場にいるというだけのことです。TAMLOとアメリカのチームと日本のチームの三者で話し合うことで、新たな発見をすることができ、ブランドの研修プログラムを更新することになりました」
翻訳とローカライゼーションの違い
企業が変化を受け入れても、ローカライゼーションの解釈の仕方によっては、海外進出につまずく可能性があります。いまだにローカライゼーションを単なる翻訳と同じだと考える意見もあります。しかし、翻訳はあくまでも全体的なプロセスにおける一部にすぎません。優れたローカライゼーション・プロジェクトでは、総合的なアプローチが必要になります。起用するモデルやインフルエンサーから、広告手法に至るまで、あらゆることを考慮しながらローカライズを進めていきます。
一方で、翻訳とローカライゼーションを一緒くたに考える企業は、直訳したコンテンツを作る傾向にあります。そうすると、良く言えばぎこちない表現ですが、悪く言えば理解しにくい表現、あるいは不快な表現が含まれたコンテンツになってしまいがちです。
消費者のうち40%にあたる人が、ローカル言語でコンテンツが作られていないウェブサイトからは購入しません。また、消費者のうち41%にあたる人は、文法に誤りがある表現が使用されたウェブサイトを信頼しません。Jamesは次のように語ります。
「多くの企業が自社のコンテンツをローカライズする際に、ローカライゼーション・サービスではなく、翻訳サービスを利用しているのは不可解に思えます。最も重要なのは、ユーザーとの信頼関係を築くことのはずです。こういったコンテンツをよく見かけますが、それではブランドを信頼してもらえません」
TAMLOがお手伝いした日本のお客様の海外向けPRについて、Nanakoは次のように説明します。「日本語の商品名がすでに英語に直訳されていました。英語ネイティブによるプレスリリースを作成するときに、その商品名もなんとか違和感なく紹介しようとしましたが、どうしても不可能でした!お客様はそのような英語を使っても問題なくて、むしろクールだと思っていたのです。実際にローカルで理解される英語ではないことに気づいていないようでした」
TAMLOはそのお客様の海外向けPR全般を支援することになりましたが、すぐに予想以上に大きなプロジェクトへと発展していきました。Nanakoは次のように説明します。「コロナ禍の影響が改善され、海外から日本を訪れる観光客が再び増えています。そのため、お客様が英語力を高める必要があることに気づいたのです」
その逆で、アメリカやイギリスの企業が日本向けにローカライズする場合も同様です。「大企業が翻訳会社を利用して全体を和訳したウェブサイトを目にしてきました。私たちのチームの日本人メンバーがそういうサイトを見ると、驚きの反応をしています」とNanakoは笑います。
また、自国の文化に基づいた思い込みや偏見があると、ローカルにおいて不適切な対応をしてしまいます。例えば、ミームがそうです。さまざまなミームがネット上に溢れており、いまでは「ミーム化」は効果的なデジタルマーケティングの手段のひとつとして考えられています。少なくとも欧米の文化では、その傾向があります。
「アメリカではミームがマーケティングにおいて重要な役割を果たしています。しかし、日本ではミームは全く通用しません」とJamesは説明します。「たとえ世界的に通用しそうなミームであっても、日本のユーザーには響かないでしょう。最近、私たちはあるブランドのミームを主体としたコンテンツマーケティングを支援しましたが、そのコンテンツを日本のユーザーに合うように調整する必要がありました」
マーケティングやソーシャルメディアのトレンドについては、いくら海外で大流行したとしても、それが世界的な現象とは限りません。
海外向けや日本向けのローカライゼーションにお困りでしたら、多様な文化に精通した専門エージェンシーであるTAMLOにご相談ください。