2023.12.15

世界の仲間とどう働くか – 言語・文化・時差のギャップを埋める方法

TAMLO

TAMLOは、東京とロンドンを拠点に置くコンテンツマーケティング・エージェンシーです。文化的に多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まり、グローバル企業を数多く顧客に抱えています。これまでに海外ビジネスで起こるたくさんの課題を、チーム一丸となって乗り越えてきました。

私たちは「文化」を橋渡しするエージェンシーだと自負しています。そう言えるのも、自分達がさまざまな国に暮らし、英語と日本語の両方を使って仕事をしているからです。

社内のコミュニケーションがうまく行っているのは、メンバーそれぞれに共通の理解があるからかもしれません。それを手助けしてくれているのが世界的な経営大学院INSEADのエリン・メイヤー教授による『カルチャー・マップ:世界を8つの指標で理解する』という本です。

この本にはビジネスにおいて文化の壁を乗り越えるためにどうすればいいのか、有益な情報がたくさん書かれています。TAMLOのメンバーは皆、この本を所有しており、そこから多くを学んでいます。社内外のコミュニケーションで立ちはだかる壁を取り除くため、独自のプロセスもそこから開発してきました。

TAMLOには、日本、カナダ、アメリカ、イギリス、インドネシアなどさまざまな国籍のメンバーが在籍します。日英両言語を話すメンバーが多いですが、英語しか話さない、あるいは日本語しか話さないメンバーもいます。そのため、コミュニケーションについては微調整が必要でした。単なる人材マネジメントのためではありません。それは、組織として機能させるために必要な最低限の努力だといえます。

以下に私たちの取り組みのいくつかをご紹介しましょう。

同時通訳、絵文字、思いやり

「会議ではいつも誰かが通訳しています。両言語が話せるメンバーは自分で通訳しますし、日英どちらかしか話さないメンバーはバイリンガルのメンバーに通訳してもらいます」とChief Localisation OfficerのAramaki Nanakoは語ります。

さらにConsultantのJames Lovellは次のように付け加えます。「私は英語しか話さないので、アカウントマネージャーのNina Fujiiが日本語に通訳してくれます。いつも他の人たちのことを思いやってくれるんです。自ら進んで通訳を買って出てくれるので本当に助かっています」

どんな国や地域でも、効果的なコミュニケーションには「思いやり」が欠かせません。多様な言語を話すメンバーが集まるチームではなおのこと。TAMLOにおいて、思いやりを大切にする心はビジネスを円滑に進めるための重要なカルチャーの一つとなっています。

「通訳や翻訳が挟まるので、情報がそのまま伝わるわけではありません。だからこそ、自然な気配りができるメンバーの存在は重要なんです」とJamesは説明します。「お客様とのミーティングでも、この思いやりは発揮されます。具体的には、日本語しか話さないTAMLOメンバーがイギリスのお客様とのプロジェクトに携わる場合や、その逆の場合など。ミーティングで一人でもわからない言語があれば、必ずTAMLOの誰かが通訳して、情報が正確に伝わるように配慮します」

ここまで会話レベルのコミュニケーションについて紹介してきました。TAMLOではテキストレベルでのコミュニケーションについても「思いやり」を持った行動を重視しています。

「例えば、私たちは主にSlackでやり取りしています」とJamesは語ります。「自分に届いたメッセージに対して国旗の絵文字を付けてリアクションすると、その国の言語に自動翻訳されるようなbotを開発しました。おかげで話す言語が異なるメンバー間でも簡単にテキストコミュニケーションが取れるようなりました」

「事前準備」を重視するか、「その場の考え」を重視するか

ビジネス文化にはそれぞれの国で違いがあります。例えば、私たちは仕事をするなかで、日本では「事前準備」を重視し、イギリス、アメリカ、カナダでは「その場の考え」を重視する傾向があるのではと考えています。こうしたスタイルの違いから、コミュニケーションのミスが頻発することは想像に難くありません。入社したばかりのメンバーにとってはなおのこと。戸惑うのも当然です。これはカナダ育ちのNanakoがTAMLOの日本チームに加わったばかりの頃に実感したことでもあります。

Nanakoは次のように振り返ります。「代表のYuichiが会議に参加するとき、常に同行していました。彼がどのようにディスカッションを始めるのかを観察しながら、私も真似するようにしました。最初の頃、私はプロジェクトやクライアントの背景にある情報を伝えないまま製品の詳細を説明しようとしていて、いつも止められていました」

「最終的に、日本でプロジェクトについて議論する場合は、先に背景の詳細を伝えたほうがスムーズにいくということを学びました。それは、同僚、フリーランスのパートナー、お客様など、相手が誰であろうと変わりません。ただ相手に依頼したいことを伝えるだけではなく、その全体像まで示さなければなりません。日本ではまず全体的な視点を必要とします。カナダでは一度も経験しませんでしたが、日本では時にアジェンダをまとめたスライドを作成する必要があります!」

「最初は余計な仕事が増えて、非効率的だと思っていました。でも、このプロセスに慣れてしまえば、プロジェクトが始まったときにミスが減ることに気付きます。プロジェクトメンバーが細部を把握し、その意味を理解しているからです」

このように様々な文化を考慮に入れながらプロジェクトにあたることは、スタッフにとっても、ビジネスにとっても、数多くのプラス効果をもたらします。

イギリス人のJamesもまた「事前準備」を重視する仕事のスタイルを理解しています。「異なるスタイルに触れることで自己成長につながりました。私はその場でアイデアを出すスタイルに慣れていました。イギリス人は背景よりもどんな効果があるかをすぐに知りたがるのかもしれません。確かに、イギリス人は日本人の同僚やお客様に比べて詳細やスライドを求めない傾向があるように思います」

「いずれにせよ、TAMLOでの仕事を続けるうちに詳細を伝えることには価値があると気付きました。スタッフとお客様がコミュニケーション不全に陥る可能性がなくなります。何を期待されているのかを全員がしっかりと把握しているからです」

コミュニケーションの戦略を立て、実験する

TAMLOでも、意思疎通が最初からうまくいっていたわけではありません。最適なコミュニケーションとコラボレーションのアプローチが固まるまでにはある程度の時間がかかりました。Nanakoは語ります。「TAMLOでは広い心で状況を受け入れ、じっくりと観察し、全員で徐々に変化していく、というような緩やかなプロセスを通ってきました」

Jamesは「できたばかりのTAMLOはYuichiと私だけだったので意思疎通はとても簡単でした。しかし、TAMLOが成長するにつれコミュニケーションのプロセスを整備する必要を痛感し始めました」

「社内では、正直にお互いに向き合っています。最初の頃は、日本人の同僚に何か手伝いをお願いするとき、ピンポイントの内容だけを伝えていました。しかし、その度にその依頼の全体像について尋ねられるのです。背景の理解がクライアントワークにとっていかに重要かをそこで学びました。そういったプロセスを経験してきたことで、効果的にプロジェクトの準備をする方法を学ぶことができました」

上下関係をなくす

日本ではビジネスにおいて伝統的にある程度の上下関係が重要だと考えられています。例えば、お互いの苗字に「社長」「〜部長」「〜さん」という敬称を付けて呼び合うことが一般的です。一方、欧米では、多くの場合、ファーストネーム(名前)でお互いを呼び合います。TAMLOでは後者を採用することにしました。日本の文化がダメだから、というわけではありません。その方が異文化のコミュニケーションを円滑にし、かつそれぞれの言語の壁を取り払うことが容易になると考えたからです。

TAMLOではルールを作りました。

Jamesは語ります。「どのような関係性であっても、たとえ日本人同士であっても、お互いをファーストネームで呼び合おう」

当初はそれが難しかったメンバーもいましたが、JamesもNanakoもポジティブな変化があったと感じています。

「入社してからしばらく、同僚を『ユキエさん 』と『さん』づけで呼んでいました」とNanakoは言います。「彼女は私より年上なので敬意を払う意味でそれが自然なことだと思っていました。でも、ある日、彼女が私のところに来て言ったんです。『なぜ、まだユキエさんと呼ぶの?仲間外れにされているような気がするし、距離を置かれているような気がする 』と。それから、私は彼女のことをユキエと呼ぶようになりました。おかげで距離が縮まったような気がしたし、それは他の人たちに対しても同じでした」

TAMLOでは日本や欧米のビジネスにおけるネガティブな側面に、サイロ化(チームが孤立し、時には意図的に情報伝達を控えること)があるのではと考えています。

「TAMLOではサイロ化は起きません」とJamesは説明します。「多様な人々が様々なプロジェクトに参加し、折に触れて関わり合うことを意識しています。多様なメンバーが集まる会社だからこそ、なおのこと重要です。それぞれのスキルセットを理解し、お互いをどう助け合えるのかを考え続けています」。

「実は今、私たちのミッションとビジョンを見直しています。それぞれのメンバーから見解を出してもらい、ひとつひとつ議論しています。だれもが平等に、正しく理解することに時間を掛けています。全員の足並みが揃えることが大切なのです」

「仕事にしばられない時間」を作る

組織が直面するコミュニケーションの壁は、言語や文化の違いだけではありません。異なるタイムゾーンを越えて仕事をすることも、乗り越えるべきハードルです。その理由はたくさんあります。

Jamesは次のように説明します。「時差があるので、メンバーは昼夜問わず仕事のメッセージを受け取る可能性があります。勤務時間後のメッセージが気になってしまうメンバーもいるでしょう。そこで、Yuichiはメンバーのためにハンドブックを作成ました。それによって働き方がかなり改善されたと思います。ハンドブックの大部分は時差をどうやって乗り越えるか、その方法論に割かれています。例えば次のようなルールがあります。メールは特定の時間に送信するようにスケジューリングし、Slackの通知はオフにする。シンプルですが、こうした気遣いが重要なのです」

TAMLOではスーパーフレックスタイム制を導入しているため、このルールがなおさら意味を持ちます。それぞれが好きな時間に働くことができるため、こうしたルールを設けておけばコミュニケーションロスが起きにくくなります。

「カレンダーを共有することで、メンバー全員の勤務時間とそれぞれの都合が確認できます」とJamesは語ります。「また、全員が 『ゴールデンタイム』、つまり日本とイギリスで連動しやすく会議が設定可能な時間帯を把握しています。そのため、キャッチアップすべきことはそこでキャッチアップできるので業務に支障がでることもありません。リモートワークがメインなので、朝夕の通勤がないこともとても助かっています!」

こうした社内の仕組みやルールは、実際の仕事で役立つだけではなく、チームの士気も高めてくれます。特定のタイムゾーンが優先されることがないので(大企業では本社の所在地によって特定のタイムゾーンが優先されることも多々あります)全員がつながりと配慮を感じて働くことができます。

文化の違いを受け入れ、それぞれが柔軟に対応していけば、海外ビジネスでにおける大きな成果が得られるはずです。TAMLOでは、こうしたプロセスを整えることがより良いチームワークと、ポジティブな仕事環境作りにつながると信じています。

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