2020.04.03

「伝わる英語」とウェブサイトの多言語化

Yuichi Ishino

ウェブサイトに掲載するコンテンツの英語化

海外進出にあたって、まず取り掛かりたいのが自社ウェブサイトのローカル言語化です。ターゲットとする地域にもよりますが、とりわけ英語化の手配は必須でしょう。しかし、一言で英語化といってもアプローチの方法は様々。アメリカ英語がいいのかイギリス英語がいいのか、あるいはトーンアンドマナーはどのようなものがいいのか、詳細を検討し始めるとキリがありません。以下、ウェブサイトのコンテンツを英語化するにあたって、ここだけは押さえておきたい基本的な考え方を見ていきましょう。

 

平易な英語で書くことのメリット

「2010年平易記載法」というアメリカの法律をご存知でしょうか。「連邦政府からの通達はすべて平易な英語テキストで書かれること」を義務化したしたもので、オバマ大統領の在任中に制定されました。「プレーン・イングリッシュ(中学生レベルの平易な英語)」に対する検討はかねてよりありましたが、スペイン語を話す移民のシェアが増えるなど、多様な人々が暮らすアメリカの実情を鑑みてその運用が始まったというわけです。

 

この考え方は、海外向けのウェブサイトづくりにも通用するものだと思います。とりわけ、事業内容や製品の内容について語る「解説」系のコンテンツで、顕著に当てはまります。なよほど潤沢なバジェットがない限り、海外市場を目指す日本企業においては、まず英語でのウェブコンテンツづくりを優先されると思います。英語を母国語とする(ことが多い)アメリカ人やイギリス人、オーストラリア人だけでなく、第二言語として英語を操る人々にもメッセージが伝えられる可能性が高いからです。しかし、そうした人々の英語のレベルはまちまちです。ほぼネイティブレベルの人もいれば、中級程度の人たちもいるでしょう。あらゆるレベルの人たちに理解しやすいコンテンツとするため、ウェブサイトに書かれる英語は、平易である必要があるのです。また、既存の日本語コンテツを英訳する場合も、「とにかくシンプルに訳すこと」を念頭にディレクションに当たると良いでしょう。

 

さらに、英語で作られたコンテンツは、コンテンツをさらに多言語化する際の「もと」となり得ます。例えば英語を理解するポルトガル語の翻訳者は日本語を理解するポルトガル語の翻訳者より多いわけですから、日本語よりも英語を中心に多言語展開したほうがバジェットを抑えることができるわけです。このとき、英語がどの言語でも訳しやすいよう平易かつ明瞭に書かれていれば、誤訳も減ります。このように「平易な英語記載」にはメリットが数多くあるのです。

 

コアメッセージはトランスクリエーション

しかし、「平易な英語化」を目的とすべきではないウェブサイト上のコンテンツも存在します。企業のビジョンやミッション、バリューといったコアメッセージ、あるいはブランドやサービスのコンセプトの翻訳がこれに該当します。本来、それらも翻訳時に明瞭化されるべきではあるのですが、企業の世界観に直結するそれらのメッセージは、エモーショナルかつ余韻を残すような書き方で表現されることもままあります。そうしたものについても平易な表現にしてしまっては、微細なニュアンスが抜け落ち、企業のブランドイメージが崩れてしまう可能性があるのです。

 

そうした時には、トランスクリエーションの手法が有効です。トランスクリエーションとは、翻訳を意味する「トランスレーション」と創造を意味する「クリエーション」を掛け合わせた、マーケティング業界や翻訳業界でよく使われている造語。直訳ではなく、背景にある意図、感情、文脈を大切にしながら大胆な翻訳することを指します。すなわち、ローカルの事情にあった表現に書き換えることで、受け手に違和感なく伝わる翻訳を目指すものです。

 

トランスクリエーションには高度な技術が要求されます。ウェブサイトの英語化にあたっては、これをうまく達成することが、成功の鍵だと考えていいでしょう。

 

以上に見てきたように、ウェブサイトのコンテンツの中でも解説系のコンテンツについてはとにかく平易に作成することを心がけましょう。一方、企業の世界観を表現するメッセージ系のコンテンツについてはトランスクリエーションが必要です。どのコンテンツがどのやり方に合っているか、見極めながら海外向けのウェブサイトを作り上げていきましょう。

 

Writer

Yuichi Ishino

Managing Director

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