外資系SaaS企業の日本市場参入 – ポイントと実践ステップ
日本におけるSaaSの需要
日本は高度に成熟した経済大国である一方、言語と企業文化の違いから、海外のSaaS企業を含むB2B企業にとって参入の障壁が非常に高くなっています。しかし、国内市場の魅力は計り知れず、着実な準備と適切なアプローチさえあれば、この難しい市場を攻略できるはずです。
世界4位の経済大国でありながら、日本はDXの遅れに直面しています。総務省の調査によると、日本企業の約6割がDXに遅れをとっており、SaaSを含む先進テクノロジーの導入が進んでいません。さらに、人口の急速な高齢化が進み、働き手が慢性的に不足しています。このため、業務の効率化や生産性向上が企業の共通の大きな課題となっており、SaaSソリューションへのニーズが高まっています。
一方で政府は、SaaSを含むデジタル化を後押しするため、「デジタル庁」の設置やDX推進の大型予算を組むなど、強力な施策を打ち出しています。このような環境を受けて、最近ではAIやクラウドなどのSaaSを含む先端技術分野に、大きな事業機会が生まれつつあります。
このようにデジタル化の遅れと政府の強力な支援策が交錯する中、日本のB2B市場は海外のSaaS企業を含むIT/テクノロジー企業にとって魅力的ですが、同時に挑戦の場でもあります。そこで本稿では、コンテンツマーケティングエージェンシーTAMLOの代表、石野雄一の経験に基づき、日本市場参入の実践的ポイントをご説明します。
ステップ1: 具体的な価値を訴求する
「日本企業はとてもリアリスティックで、新ソリューションの導入には慎重です。だからこそ、顧客企業の実際の課題に対し、具体的な解決策を提示することが重要になります」(石野)
例えば人手不足に悩むメーカーには、AIやRPAなどを活用したSaaSによる業務自動化でコストをどれだけ削減でき、生産性がどの程度改善されるのかを、シミュレーションで分かりやすく示すことができます。数字で示せば、より説得力があるはずです。
また金融業向けには、セキュリティ面での高い安全性をアピールするため、SaaSがクラウドセキュリティの業界標準規格に準拠していることを証明書で示します。さらに、他社の実際の導入事例や、パイロットでの定量的な効果測定結果を開示するのも有効でしょう。
ステップ2: 頼れるエコシステムを作る
「日本では、SaaSを含むソリューション導入時にシステムインテグレーターやITベンダーの支援を介することが多いです。大企業と提携するのはもちろん大事ですが、自社のビジネスモデルに最適なパートナーを選ぶ必要があります」(石野)
システムインテグレーターを選ぶ際は、自社のSaaSソリューションへの理解度が高いか、セールスでしっかりとサポートしてくれるか、対象業界の知見が豊富かなどを確認しましょう。ITベンダーを選ぶ時は、サービス製品が補完的で重複がないこと、経営陣とのリレーションづくりも肝心です。
技術検証だけでなく、お互いの人材育成やSaaSに関する情報共有の仕組み作りにも投資し、双方のリソースを隠さずコミットすることが大切です。
ステップ3: 優秀な人材の獲得と現地化を徹底する
「優秀な日本人スタッフを確保できるかが勝敗を分けます。単なる派遣や契約社員ではなく、正社員としてキャリアパスを用意することが重要です」(石野)
採用時は語学力だけでなく、SaaSを含むIT業界の知見とビジネス文化の理解度も重視します。外国人スタッフにも、言語研修だけでなくSaaSに関するロールプレイングや、現地企業とのミーティングなど、実践的な現地化教育が不可欠です。
さらに新卒採用やインターン受け入れを活発化し、優秀な学生の確保と、継続的な人材補充に努めましょう。また一旦雇った人材が長く定着するよう、研修制度の整備や処遇の改善にも注力する必要があります。
ステップ4: 現地ユーザーコミュニティの構築
「SaaSビジネスでは現地のユーザーコミュニティを育成し、エンゲージメントを高めることが極めて重要です。日本に足がかりを作る際は、ユーザーイベントの開催や、SNSでのコミュニティ運営、Vendor Independent記事などのコンテンツ発信などを戦略的に行う必要があります」(石野)
ユーザー企業の実務者や有力パートナー企業を巻き込んだ事例共有会やセミナーを開催したり、コミュニティ運営スタッフの雇用やインフルエンサーマーケティングなども効果的でしょう。このようなアプローチで、安心感や信頼関係を築き、ブランド認知と実導入に繋げていく必要があります。
ビジネス自体の現地化には人材の力が何より重要ですが、それに加えてユーザーコミュニティの構築も重要なステップとなります。企業は経営資源を投じてコミットすることが問われています。
長期的コミットメントが勝敗の鍵
以上のように、日本市場参入には多角的で地道なアプローチが求められます。日本企業の慎重な性質を踏まえ、あらゆる側面で日本に根を下ろすための継続的な努力が、成功の鍵となるのです。
結局のところ、短期的な利益重視ではなく、長期にわたる事業へのコミットメントを示し続けることが、日本市場攻略の最大のポイントと言えるでしょう。
TAMLOでは、すでにあるいはこれから日本に進出するB2B企業のマーケティングをサポートしています。コンテンツを通じて、皆様のビジネス成功に貢献できれば幸いです。戦略立案からコンテンツ制作まで、ワンストップでお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。