日本進出を狙う海外のB2B企業がコンテンツマーケティングで気をつけるべきこと
日本は世界第4位のGDPを誇り、その経済規模は海外のB2B企業にとって大きな魅力です。多くの企業が日本市場への進出を検討していますが、成功への道は簡単ではありません。言語の壁、文化の違い、業界特有の商慣習、厳格な法規制の遵守など、様々な課題が企業を待ち受けているからです。しかし、適切な戦略と丁寧なローカライズを行うことで、これらの障壁を克服することが可能です。
この記事では、日本市場へ進出する際に直面する主要な5つの課題と、それらに対する具体的な対策を詳しく解説します。
1) 言語の壁
業界用語の適切な翻訳が欠かせません。IT業界ではクラウド、セキュリティ、AIなどの専門用語が頻出します。建築業界では最先端のBIMやCDEに関する用語、モビリティ分野ではサステナビリティや自動運転の概念など、適切に訳さなければ信頼を失います。徹底した事前調査を行い、最適な訳語を見つける必要があります。
また、言葉遣いも重要です。英語の"You"に対し、日本語には「皆さん」「貴社」「御社」など、場面に応じた使い分けが求められます。敬語の運用も複雑で、きちんと習熟しなければなりません。言語の特性を熟知し、適切に活用することが成功への鍵となります。
2) コンテンツフォーマットとチャネル
業界によって好まれる情報の受け取り方が異なります。製造業ではカタログや製品スペックをPDFで提供することが一般的で、オンラインコンテンツの需要が高まっています。一方でモバイル端末の普及率も高く、B2B分野でもスマホ/タブレット検索が増えてきました。しかし根強い傾向としてデスクトップPCからの検索が主流です。
検索エンジンのシェアは、Google約75%、Yahoo約15%、Bing約7.5%(2023年 ・総務省)と分散しています。Google一強ではありません。実際、Yahoo!で広告を打った方が安価に済む場合もあり、状況に応じてプラットフォームを使い分ける必要があります。
SNSの利用動向も業界により異なります。中高年層はFacebookをビジネス目的で活用していますが、LinkedInの普及は300万人とまだ低い状況です。ターゲット層に合わせたコンテンツ戦略が不可欠といえます。
3) ビジネス文化の違い
日本ではビジネスにおける信頼関係の構築が極めて重要視されます。長期的な視点に立ち、じっくりと関係を育んでいく姿勢が求められます。公式の会議だけでなく、カジュアルな場での交流を大切にすることで、相互理解が深まります。
名刺交換の作法や、宴会を通じた人的ネットワーキングなど、日本には独特のビジネス習慣があります。事前の根回しを怠ると、うまく話が進められません。このような文化的違いを本社側に理解してもらうため、ローカルの代理店などが仲介に入ることも多々あります。
真のパートナーシップを目指すには、相互の文化を理解し尊重し合うことが不可欠です。いわばカルチャーギャップを乗り越える橋渡しが重要な役割を果たします。
4) 法規制の遵守
医療、化粧品、食品など、業界ごとに様々な法規制が課されています。解決策として、ローカルの専門家と相談し、最新の法改正や規制の動向をフォローアップすることが不可欠です。また、業界団体に参加し、タイムリーな情報を入手することも重要なプロセスです。
特に、景品表示法の厳格な運用や、ステルスマーケティングへの規制が強化されている点に留意が必要です。さらに医療・化粧品業界では薬機法、プライバシーマーク取得や個人情報保護法への対応も欠かせません。近年ではCSRやサステナビリティに関する法規制の遵守も求められるようになってきました。
5) 文化的ニュアンスの理解
日本では「モノづくり文化」が息づいており、技術への誇りと卓越性が重視されています。また、消費者の購買行動の特徴として、製品購入に先立ち、詳細な情報を求める傾向があります。簡素ではなく、情報量の多い丁寧な説明が好まれる所以です。
この背景には、リスク回避の文化的側面があると考えられています。不安を払拭するために事前に十分な情報を得ておきたい、というニーズがあるのです。したがって、マーケティング資料などでは、この点を踏まえた適切な情報量と分かりやすい説明が肝心です。
一方で、直接的な販売トーンは「押しつけがましい」と受け取られがちです。「ご提案」などの間接的な表現を用い、押し付けがましくない工夫が求められます。日本人の文化的ニュアンスを理解し、それに適ったスタイルでアプローチすることが成功の鍵となります。
このように、言語、メディア、商慣習、法規制、文化などの側面で地場の事情を熟知し、ローカライズに万全を期すことが、海外B2B企業の日本進出に不可欠だといえます。